ブルガリアお仕事記10(最終回)

9月12日(後半)
前回のあらすじ

時間がない中僕らは,走ったんだ.限られた時間の中,僕達はできる限りのことをやったんだ.もちろん,そんな生活はどこかにいつも波乱と破綻,問題を抱えているのはわかってた.でも...あのころの僕らは,いつも,輝いていた.あんなことが起こるなんて思いもしないで...

 ザッハトルテ(チョコレートケーキ)かシュニッツェル(薄いカツレツ)のお店,または,電車の中で,I君がチケットを忘れてきた.シュニッツェルはしっかり忘れないように,手に後がつくくらい握り締めていたのに...きっと,シュニッツェルは,薄いから飛行機カウンターでも通ると思ったんだろうな.それか,チケットがシュニッツェルよりも大事じゃなかったんだろう.
 と,思っていても,やっぱり彼もシュニッツェルを悠長に食べている場合ではないと思ったんだろう.普段は落ち着いていて,どっしりと構えていて,「僕も大きくなったらこんな大人になりたいなぁ」と思うヒトでいた彼も,ちょっとあわててた.よかった,彼も感情のないロボットではなかったんだ.
 チケットをなくしていない僕が彼と一緒に探しに行って飛行機に乗り損ねてもまったく意味がない.とりあえず彼は,荷物の一部とシュニッツェルを僕に預けて,市内へとタクシーで戻っていった.彼の荷物も一緒にパッキングしていると彼の荷物からT/Cとか日本円とかがもっさりと6万円(彼が万が一のために用意していたお金)が出てきた.おぃおぃ,オマエ,万一のときは今だぜ・・・とか,思って,追いかけて,渡す.アア,オレ,イイコトシタ・・・
 僕も時間がなかったので,必死でパッキングして,シュニッツェルを持って駅にダッシュ.なんとか無事に空港行きの電車に乗って,なんとか無事に空港へ.とりあえず,チェックインカウンターの前にいれば,I君が無事に帰ってきたときに合流できるだろうと待機.この段階で離陸の2時間ほど前.お母さんに預かった200円で豚こま200gを買いにお使いにいく子供のように,シュニッツェルの袋を握りしめる.時が過ぎれども彼は来ない.来ない.来ない.来ない....
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ここで,僕達が常識的にテイクアウトなんかできないだろうレストランで無理やりテイクアウトしてもらって,チケットよりも大事にもって帰ってきたシュニッツェルについてもう少し補則する.これは,肉(豚でも牛でも)を薄く延ばし,これに卵,パン粉(細かめ)をつけて,バターで揚げ焼いたもの.まぁ,困ったときのwikiを見ればシュニッツェル.ちなみにテイクアウトを強要したため,アルミホイルに包んでもらった.あとで,写真をみると,脳みそっぽくみえるけど,肉の皺だ.
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 ついに,離陸時間の45分前だ.シュニッツェルをもって入るわけにも行かないので,食べることにする.一枚目の肉にガブリチョとかぶりつく.あ,ほんのりあったかいけど,これ,熱々を食ったら超うまいだろうなぁ...また,冷えてきてるから,塩味が強いなぁ...肉も硬くなってるし.あれ,しかも,でかいぞ.相当でかいぞ.あぁ,奥歯が疲れてきた.うまいんだけどなぁ...ああ,うまい,歯がしんどい,味が濃いい,付け合せのジャガイモをパクリ,ああ,口の中が乾く...あ,今まで,いろんなことが急激に起こってパニックになってたから気づかなかったけど,空港にいるヒトが結構俺のこと見てるぞ.うわぁ,俺,「(おしゃれで文化的国家)ウィーンの空港で,アルミホイルからシュニッツェルをかぶりつく野蛮なアジア人」だ...しかも,2枚あるんだな.I君のと僕のと...ジャガイモもサラダも二人分.一枚で根をあげそうだ...でも,「ここであきらめたら試合終了だよ」っていうことわざもあるし,明日の自分に恥じないためにやっぱりここはもう一枚食べよう,ゲェ〜〜〜ップ.うう,I君がチケットを忘れたことがこんなところにまで波及してるよ・・・すごいな,こんなにいろんな出来事は絡み合って複雑な現在社会を構成しているんだな,そりゃ,風が吹いたら桶屋がもうかったりするわ.
 と,まぁ,最初の2口くらはおいしくいただいたのですが残りは義務感でもしっといただきました.こんど,自分で作ろう.
 食べ終わったら離陸の30分前.あれ?俺,よく考えたらまだ荷物も預けてないし,チェックも終わってないよ??うわ,やべぇ.I君がチケットを無くしたという事件はどこどこまでも波及して,

  1. I君チケットを忘れる
  2. シュニッツェルを預かる
  3. 2枚分のシュニッツェルを食さないといけない
  4. 搭乗時間ぎりぎりになる.

俺まで,飛行機に乗れなくなりそうだ.まぁ,あせって搭乗手続きを終わらせて,荷物を預けて,カウンターに入る.さぁ,あとは,身体チェックとか手荷物チェックを受けなきゃ,といろいろ考えながら先を急ごうとすると,I君発見.
 I君!??

 なんで,貴様君は,僕が待っていたのに,来なくて,俺より早く搭乗手続をすませて,ここにいるんだ?しかも,何日本人アテンダントと楽しげに話をしているのだ?俺はオマエのせいでシュニッツェルを2枚も食べたんだぞ!50-80とかっていう俺の低血圧は間違いなくシュニッツェルの塩分で80-120とかまであがったぞ!唇も震えとるわ.
 まぁ,そんな風にして再び僕をパニックにしてI君は現れました.なんか,チケットをシュニッツェルよりも大事にしない悪い子ちゃんにはソレ専用の通路があって,シュニッツェルを守って新幹線を止めて超人オリンピック失格になったり,シュニッツェルを悼んでピラミッドを作って,最後に目の見えないヒトにでかいピースをはめ込ませたり,血継限界のシュニッツェルを手に入れるために友人を作ってソレを殺すことがないように,教育を受けるらしい.免停講習みたいに.彼は僕の手荷物を持ちながら笑顔でいった「僕,手荷物がないんで」.うん,ちょっと殴ろうかと思った.
 帰りの飛行機はこれまでのプロペラ機なんかと比べ物にならないくらい,揺れて,いい気味だと思ったりしたけど,僕は僕でシュニッツェルのために塩分過多になってるから水を沢山飲んだんだけど,通路側に座ってる中国人が11時間で一度たりともトイレにたたないので,とてもつらかった.漏れるかと思ったわ.いい年して.
 最後に,おまけ.
(1)飛行機から降りたら,おじいさんおばあさんが飛行機酔いして空港で吐いてたのが,ショッキングだった.
(2)帰りの乗り合いタクシーでI君と思い出話をしてたら,同乗者にうるさいって怒られた.
(3)帰りの乗り合いタクシーで外を見てたら,ハンドルに「ビッグコミックオリジナル」をおいて,漫画を読みながら運転してる営業者がいて,ものすごいむかついたから,車に記載されてた社名から電話番号を調べて,電話してやった.「オタクの社員,そう,ナンバープレートが××××の営業者に乗ってる社員さん.彼が漫画を読みながら川端通を爆走しているのが超怖いからいい加減にしてください」.
(4)日本着が朝8時だったので,普通に登校したら,普通になんか仕事させられた.まぁ,いいんだけど.
(5)晩ご飯は味噌汁と白ご飯を食べた.
 あぁ,楽しかった.研究しないと!!