紫蘇

一昨年から数えると,紫蘇を育て始めて早2年がたつのですが,一向に収穫の日を迎えることができません.古くは,王蟲による大海嘯によって(ナメクジの大群に食い尽くされて)全滅,火の七日間で世界を焼き払った巨神兵の力を持って王蟲の進行を食い止めたのですが森もまた焼け払ってしまいました(塩を大量にまいたら全部くたびれて枯れた).
 そして,今年も育てたのですが相変わらず森の怒りを買ってしまっているようで王蟲による進軍は止まらず1度ならず2度までも殲滅させられてしまいました.超泣ける.
 このような失敗から学び,本年,私は新しい手法を考案し実行したわけです.それが「人工的な環境による飼育」というなの室内水性栽培なわけです.ティッシュにトイレットペーパーを重ね水で湿らせその上で育てる.これで,しばらく大きくしてから,そう,王蟲の侵攻に対しても抵抗できるくらいまで大きくしてから森に返そうという作戦です.
 これでそこそこ満足がいく結果が得られ,今まで観たことがない紫蘇の幼生の大群を観察できたのです.ですが,やはり植物だけではなく,これはこの地,この星に生きる全ての生き物に共通することですが,大地にどっしりと根を張り生きていかなければ大きく,尊厳に満ちた存在にはなれないのではないか,幼生のままで大きくなりにくそうな苗をみて思ったわけです.
 「次の一歩を踏み出すときは今だ!」と,巣立ちを迎えたツバメさながら,しかし,親心からかまだ大海嘯の危険のある大海への旅立ちを許すことはできなかったので,2リットルのペットボトルの横を裂き,土をいれそこで育てはじめたのです.
 このあたりで初めて来るステージに,緊張しながらも,気が大きくなっていたのでしょう,「やっぱり,日に当たらないとだめだよな?土に根を張りながらも太陽とともに生きよう」と,もうひとつの火の七日間のことをすっかり忘れていたのです.
 昨日,ペットボトルを思い切り日の当たる場所において大学に来たのですが,昼過ぎ,某所から「紫蘇の幼生が干物になりかけている」エマージェンシーコールが発せられたのでした.そう,それは太陽という名の巨大な軍事力の行使,いわゆるバスターコールです.オハラを焼き払うかのように紫蘇の幼生は焼き払われたのでした.
 現在,救急延命措置を施していますが,明日はどっちでしょうか?超泣けた.