あらら..

  • 起床8時

目覚ましは7時だったんですけどね.
 日曜日に大学に行ってきた帰りに,家の前の駐車場でおじさんが棒を振り回していました.一瞬「お,危ない人か?」と思ったのですが,おじさんも目撃されたことに気づいたのでしょう,「にへへ」という純和風な笑いを浮かべ口角を上げたので,一瞬の間で「悪人じゃない,小市民だ!」と心の中で判定をくだしたのです.
 それとともに,なぜか僕も小市民的シンパシーを覚えたので頭をうっかり下げたのです.そうすると同時におじさんの頭も下がっていました.なぜでしょう?この非常に短時間の会話も無いコミュニケーションにも関わらず,視覚的に相手が頭を下げようとしているのを非明示的に目視するやいなや,明示的で順序を踏まえた逐次的処理が下されるよりも先に,全身の神経は「腰を折り,首を下げろ」と抹消神経を通じ下肢へと命令を下したのです.
 この短いコミュニケーションにおいてもこのような寸文の狂いも無く視覚を通じた運動行為を行い,メッセージを伝え合うことができる能力は,いったいどのようにして獲得されたものなのでしょうか?
 言語獲得を曲がりなりにも調べてきた身としては儀礼的行為という非常に頻度が高い行為であり,現在の人間社会とくに日本という儀礼的行為を重んじる社会においては,会釈は非常に高い顕著性を持つと考えられ,ある種の「記号」として扱われることで,全身に命令を下す脳細胞で構成される回路自体がこの「記号処理」に特化していると考えてもいいのではないでしょうか.
 なんだか,このあたりで飽きてきたのであれです,何がいいたいかというと,おじさんはその後しきりに,「バットじゃないんだ,怪しくないんだ」と言いたげに,硬いバネでできた健康器具を振り回していたのですが,昨今の犯罪において使われかねないことを十分に理解しているが故の,嫌疑を晴らすかのような必死なその目は幾分狂気を帯びていて怖かったということです.
 あと,家に入ってベランダに出たらそこにもやっぱりそのおじさんがいて,二人して恥ずかしそうにお辞儀をした.