ふと思い出してヤフオクやamazonで調べたのだけれど見つからなかった映画.ポーランド映画で監督はアンジェイワイダ
 これを見たのは大学の2回生くらいのときで一番映画を見ているとき,というか,浪費していた時代.毎晩3本くらい友達と借りてきては見ていた.だいたい1本目は誰かの個人的嗜好によるB旧映画で2本目はそこそこコンセンサスが得られる映画,3本目はC級とかフランス映画だった.僕らは,必ず映画は真っ暗な状態で,出来る限り物音を立てずに見る,という暗黙の規則で鑑賞していた.そのため,大体僕は3本目に到達する前に眠りに落ちていたのであまり記憶がない.

 ヒッチコックからタイムボカンシリーズ,オカルトから心霊ビデオ,温泉芸者シリーズからフランス映画まで手広く浪費していた.よほど印象に残ったもの意外は記憶の残滓になっているのがまったく申し訳ない.
 そんな中この映画はかなり強いインパクトを持って記憶に焼きついている.戦時下で,追い詰められたレジスタンス軍.地下水道を抜けて脱出を試みる.舞台は延々と薄暗く湿った地下水道.常にぽたりぽたりという水滴が滴る音.パシャパシャと衣類を濡らす水音.息音が耳元にまで届きそうな,狭い地下水道に多くの人間がいるという切迫感.地下水道は迷路のごとく入り組み,後ろからは追手の軍.過度のストレスから肩が触れた,道に迷った,足音がうるさい,こんな些細なことから起こるいざこざ.ラストの格子越しの四季と俯瞰からの習練場は,同じなのかもしれない.
 極限状態の人間をストレートに描いた映画で,今でも相当行き詰っているけれど,当時から行き詰ってた僕はなんとも言えずに不愉快な気分で映画を見終わった.その後少し自分の現状を振り返って泣いた.