ブルガリアお仕事記4

9月5日
 相変わらず乾燥気候になれずに,喉が痛い.宿泊施設は5階建てのワンルームばかりの建物.朝起きて一番にすることは飛行機のチケットとかパスポートとかトラベラーズチェックとかをどこに隠すかとかを検討すること.ブルガリアの治安がわかっていないからね.結果,

  1. パスポートは隠れウェストポーチに入れて持ち歩き
  2. チケットはベッドの隙間にねじ込み
  3. トラベラーズチェックは部屋の机の引き出しの裏にガムテープで貼り付け

ここまでやればどれか保険として機能するだろう.
 んでもってまず宿代を先払いしなければならないけれど,まだほとんどのお金がユーロなのでレバ(ブルガリア貨幣.1レバ=70円)に換金しなければならない.タクシーを頼むも寮のおばさんはまったく英語が通じず.そこにオーガナイザが来てくれて通訳を頼み(日本人の僕たちが英語を話し,ブルガリア語に変換してもらう),運転手が異様にハイテンションなタクシーをゲット.たまたまいた学会参加のフランス女性カリーナもレバが欲しいらしく相乗りで街へ.両替はホテル黒海(チェルノ モレ)のそばにあるらしい.ちなみにチェルノ=黒,モレ=海です.ブルガリア語講座.
 まぁ,無事換金し,宿代(231レバ=16000円)を払う.次は学会参加受付.どうもブルガリアには,ブルガリアタイムというものがあるらしく.10時になったのに,誰もいない,ていうか受付がない.待つこと1時間でようやく受付設置.ええ加減な学会だなぁ・・・
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 この日はよくある学会と同じで(1)受付,(2)開会挨拶,(3)いくつかのセッション,(4)ウェルカムパーティというスケジュール.ブルガリアタイムで出鼻をくじかれた僕らは,この後,開会挨拶によってさらに度肝を抜かれた.
 開会挨拶(1時間)は学会オーガナイズコミッティーのヒト.いきなりスライドからはブルガリアかロシアの有名そうな曲が流れ出し,それが終わると彼はおもむろに次のスライドへのボタンを押す.刹那の間のあと,人工音声で英語が・・・「おお,人工音声かぁ,さすが計算論の言語学会だなぁ」と感心してたら,どこまでいってもこのヒトボタン押すだけ.スライドには死ぬほど小さいフォントで文章がもりもりと書いてある.黙々と人工音声だけが流れる.うわぁ...もしかして,ていうか,このヒト,国際学会のスタッフなのに英語喋れないよ・・・
 そんな初日.
 ちなみに初日の最初のディスカッションが「昼食時間(30分)が短いので長くするかどうかについて」.後で聞いた話では,ロシアやブルガリアのヒトは昼飯を食わないらしい.朝ご飯,4時ごろの夕ご飯んでもって9時ごろの晩ご飯という3食らしい.でも,もっとなんていうか言語のディスカッションしようよ・・・
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 ウェルカムパーティはレストランで,ロシア人は乾杯好きだなぁ,隣のヒトとこのヒトの発表内容と絡めて議論してたのに5分か10分おきに乾杯の挨拶が繰り広げられる.落ち着かない.
 まぁ,ず〜っと話をしながら飯を食い,ワインを飲んでいると,I君がカタコトの日本語で話しかけてくる.いまいち放置してたら,いきなりI君が英語でスピーチを始めた.どうも,チェアのヒトに「アジア代表で挨拶しろ」って言われたらしい.以下,うろ覚えの記憶のスピーチ内容.

日本から来た○○です.この国は料理もおいしいし,いい国で楽しんでいます.僕の英語はつたないので,発表スライドをみて全部理解してください

すごいなぁ,どうどうとスピーチしてたよ.この旅で,彼は後輩ながらすごいなぁと尊敬するところがたくさん見つかりました.一番は落ち着いているところ.僕はねずみのように落ち着かなくなり焦ったりするんですが,彼はどっしりと構えている.こういうヒトになりたかったよ・・・
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 ちなみにこっちでよく食べたのは,ウェルカムパーティでも出たけど「キュウリとトマトとチーズのサラダ」野菜とチーズだけですが両方とも味が濃くとてもおいしい.ただ,僕には味が濃すぎるのでサラダだけでパンを相当食べた.塩辛いんです.ワインも毎晩出て,水が無いから,よく飲みました.ワインもやっぱりヨーロッパは農業が盛んだからか安いのにおいしかったです.
 さて,そんなこんなで食事が終わり,帰る段になって横のヒトにどこに泊まって折るのかとたずねると,寮に泊まっていると.じゃぁ一緒だから帰ろうかという話になって,歩いて帰る事に.これがやっぱりおきた海外トラブルのはじめ.
 二人で音楽の話とか文化の話とかを混ぜながら議論をして歩き続けるも,歩けど歩けど寮につかない.なんだかんだでよっぱらったまま歩き続けた.しまいには話のネタが無くなって二人でビートルズとか歌いながら歩いたもん.なんだ?夕焼け小焼けの帰り道か?
 んで,歩くこと1時間半ほど,歩きでおそらく時速4kmで1時間半だから6km!?あほかと.しかもついたところは見たことも無いコテージが並んでいるところ.「お前の部屋は何号室か?」とたずねられても,俺の部屋は306・・・306って普通は3階だろ.ここはコテージ.どうみても1階建てだ.お前,俺はウェルカムパーティで306って答えたときに変だと思わなかったのかい?
 すぐさま「ここはどこなのか?」とたずねると「カンポスだ」と.後で聞いた話では,大学関連の宿泊施設は2つあり.ひとつは「コテージ村=カンポス」でもうひとつが僕たちが宿泊している「寮=ティックス」だそうだ.で,僕は勘違いしており一緒だと思っていた.I君も一緒だと思っていたから俺だけがおかしいわけではない.うん,おかしくない.
 治安もわからず,現在位置もわからず,目的地もわからない.挙句にタクシー運転手は英語が通じない.うぉ〜なかなかこのシチュエーションはスリル満点だ.なんて,楽しんでる場合じゃない.普通に引いた.あれな,人間分けわからんくなると笑うな.2年前にシドニーの学会で学生寮に宿泊してたとき,オートロックのベランダ(3階)に閉じ込められたときのことを思い出したよ.あの時は3階から飛び降りたっけなぁ・・・んでもってオートロックの玄関から入ろうと思ったら寮長さんがものすごい疑いの目で見られたっけなぁ・・・そうだ,あの時はちょうど冬で寒かったなぁ・・・俺っていつもこうだなぁ・・・
 まぁ,結論から言えば,もりっと学会の同時通訳のお姉ちゃんもこのコテージ村に宿泊しててタクシーの運ちゃんに含ませてくれて,無事帰れたんですけどね.そんな学会初日.
 あ,ちなみに,I君は僕の帰りがあまりに遅いため「僕の彼女か?」といわんばかりに僕のことを考え続けてベッドの上で座りながら寝てたらしいです.すまん.
 あ,さらに,僕の発表は翌日の昼2番目.うふふふぅ〜.25時就寝・・・[[]]